今年、印象にのこった三冊

 10月以降はほとんど更新しないまま、はや大晦日。このブログを読んでくれている知人から、「体調でも悪いのか」とのメールが送られてきたりもしました。更新しなかった理由はいろいろあるのだけれど、とにかく元気にはしています。「お久しぶり」の便りにかえて、今年、印象に残った本を3冊紹介しておきます。

広井良典著『コミュニティを問いなおす

医療、福祉についてさまざまな側面から多面的な考察を繰り広げてきた広井氏の視点は、今回の著作でさらに広がりと深みを増したように感じました。今後の地域社会のあるべき姿を説得力をもって指し示したこの一冊は、地域医療に携わる私にとっても大きな刺激になりました。

熊野純彦著『和辻哲郎―文人哲学者の軌跡

 数ある和辻本の中でも、出色の一冊。この著者ならではのしめった文体がこの日本人哲学者を論じるのにフィットしていて、著者とテーマの幸福な出会いを見ることができます。

小熊英二著『1968若者たちの叛乱とその背景

 紛争の中でもがき苦しんだ人々の姿と、膨大な資料を一つの作品として編み上げた著者の力量とに心うたれました。『民主と愛国』以上に批判も多いようですが、対象視された人たちの自己愛の傷つきを考えれば、そうした批判がわきおこることもやむをえないことでしょう。しかしこの著作が出なければ、そうした議論もまた湧き起こることはなかったでしょうし、その意味でこの勇気ある著作が世に出た意義は非常に大きかったと思います。

 ということで、みなさんよいお年を!