2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

谷崎潤一郎著『夢の浮橋』を読む

谷崎潤一郎著『夢の浮橋』。1959年刊。 主人公、糺(ただす)の母親への近親姦願望を扱った、谷崎晩年の一作。 ともかく、大変けったいな小説である。 この小説の主人公、糺くんは、自分が抱えている問題について悩むこともなければ、主体的に解消しようとも…

陸軍面接官に土居健郎先生が述べた危険な発言

昨日の日本経済新聞の夕刊に、土居健郎先生についての「追想録」が掲載されていた。日経の特別編集委員の方が執筆された、『「甘え」の構造』の紹介を軸にした記事である。 ここに先生の最後の日々の様子が紹介されている。 亡くなる半月前まで、東京・世田…

小熊英二著『1968(上)若者たちの叛乱とその背景』を読む

名著『〈民主〉と〈愛国〉』の小熊英二さんの新刊ということで、知るなり購入した。上巻1092頁、下巻1008頁の巨大な著作である。ただ、まだ上巻だけしか出版されておらず、下巻は7月末に刊行予定となっている。出版は新曜社から。 個人的には、村上…

緩和ケア病棟の天井について

本日の夜は、緩和ケアチームの定例カンファレンスがあった。 ある患者さんが呟いた「病院で天井ばかり見て過ごすのがつらいから、家に帰りたい」という発言が報告されるのを聴いて、「そういや、天井のことってあまり考えてこなかったな」と気がついた。 中…

土居健郎先生の訃報に接して

土居健郎先生の訃報に接して、悲しみや寂しさ、それ以外にもさまざまな感情が一気に湧いてきて、それを正確に表現しようと試みたのだけれど、どんなに言葉を費やしてもうまく書き記すことができない。断片的な思いだけれど、とにかく試みに綴っておく。 僕は…

仲正昌樹著『今こそアーレントを読み直す』を読む

書店で仲正氏の新刊を目にしたので、購入。タイトルは『今こそアーレントを読み直す』。2009年5月刊の講談社現代新書。 ハンナ・アーレントの思考の主題を四つ抽出し、それらの問題が現代に生きる者にとっていかに切実かをうまく示しながら、アーレント…

ダニエル・デフォー著、吉田健一訳『ロビンソン漂流記』を読む。

『ガリヴァー旅行記』からのつながりで、『ロビンソン漂流記』を読んだ。1719年刊。訳本は新潮文庫の、流麗な吉田健一訳を選択。 この主人公、ロビンソン・クルーソーは、お気楽なガリヴァーとはうってかわって、まじめ一徹である。彼は無人島での単独生…

スウィフト著『ガリヴァー旅行記』を読む

近代へと社会が歩みを進める中で、人がどのような体験をしていたのか知りたくて、この本を読む。 スウィフト著、『ガリヴァー旅行記』。原書は1726年イギリスで出版。翻訳は今回、岩波の平井正穂訳を選ぶ。 童話化された物語として知られているこの本。…