医療における個人情報取り扱いの状況

 守秘義務に関する現在の状況について確認するために、厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」をチェックする。平成22年9月17日改正版と、このQ&Aを主に見る。
 プライバシーについて考えるために、重要な点。まず診療録は、患者の個人情報というだけでなく、医師の個人情報という面もあることを指摘したところ。

また、例えば診療録には、患者について客観的な検査をしたデータもあれば、それに対して医師が行った判断や評価も書かれている。これら全体が患者個人に関する情報に当たるものであるが、あわせて、当該診療録を作成した医師の側からみると、自分が行った判断や評価を書いているものであるので、医師個人に関する情報とも言うことができる。したがって、診療録等に記載されている情報の中には、患者と医師等双方の個人情報という二面性を持っている部分もあることに留意が必要である。(p6)

 そしてもう一つ、いわゆる事例研究における個人情報の取り扱いについて記したところ。

また、特定の患者・利用者の症例や事例を学会で発表したり、学会誌で報告したりする場合等は、氏名、生年月日、住所等を消去することで匿名化されると考えられるが、症例や事例により十分な匿名化が困難な場合は、本人の同意を得なければならない。(p7)

 こうした規定の前提となっているのは、「自己情報コントロール権としてのプライバシー権」の考えだ。心理療法の事例研究も、当然ながらこの考えにそって行わなくてはならない。