秘密の心理

 小此木啓吾笑い・人みしり・秘密―心的現象の精神分析』(創元社、1980年刊)を読んでいて、印象的な一節に出会った。

 そもそも秘密は、秘密にされる内容の如何によってではなく、むしろ、何ごとかを「秘密にしよう」とし、その「秘密を保とう」とする主体の”意志”の働きを、その本質としている。したがって「秘密」は、その主体の自己確立や自己維持の”意志”の顕現である。(pp111-112)

 先日のプライバシーとまなざしの記事で、「舞台上で裸体を披露するストリップ嬢が、支度部屋を見られることを恥ずかしがる」事実を引いたが、この心理も、小此木先生の一節を用いて説明できそうだ。
 つまり「見せる」場合には、そこで主体の意志によるコントロールが効いているために、基本的に恥や恐怖が生じない。しかし「見られる」場合にはコントロールが効いていないことが多いので、そこで恥や恐怖が生じる。ということなのだろう。

笑い・人みしり・秘密―心的現象の精神分析
笑い・人みしり・秘密―心的現象の精神分析小此木 啓吾

創元社 1980-01
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