ケースメント「Learning from our Mistakes」を読む

偶然ケースメントの新刊「Learning from Life」という本が出版されていることを知った。

Learning from Life

Learning from Life



さっそく注文したが、手に入れるまでしばらく時間がかかりそうだ。彼のみずみずしい文体と豊かな臨床感覚は他に得難いものであり、早く読みたい、という思いが強く湧いた。しかし手元に本がなければいかんともし難く、飢餓感をおさめるために書棚から旧著を引っ張り出してきた。
 久々に開いた本はこれ。

Learning from our Mistakes: Beyond Dogma in Psychoanalysis and Psychotherapy

Learning from our Mistakes: Beyond Dogma in Psychoanalysis and Psychotherapy



 私は保有していないが、日本語訳「あやまちから学ぶ」も出版されている。

あやまちから学ぶ―精神分析と心理療法での教義を超えて

あやまちから学ぶ―精神分析と心理療法での教義を超えて


 これは過去に彼が書いた論文や講演の内容をまとめた本なので、この本全体を貫く明確な主題があるわけではない。ただ「Learning from our Mistakes」というタイトルに掲げられているように、彼が精神分析を行う中で生じた過ちについてよく考え、彼なりに発見したことを率直に提示し、まとめあげた本である。
 日本語版の目次は以下の通り。(amazonより引用)

第1章 分析での目標に到達すること:精神分析という開かれた可能性
第2章 精神分析でのあやまちと、あやまちを避けようとすること
第3章 ひとつのセッションでの体験:コミュニケートしようとすること
第4章 自律に向けて:精神分析でのスーパーヴィジョンを考える
第5章 心理療法で援助しようとするときの落とし穴
第6章 再演と解決
第7章 患者の手を抱くべきか、それとも抱かざるべきか:さらなる考察
第8章 侵襲と空間:技法上の問題
第9章 知っていることの彼方の知らないこと
エピローグ 何処へ
付録論文 早期心的外傷の復活のときに身体接触を求めるという分析家への重圧


どの章も読み応えがあるが、特に重要なのは第7章だ。1982年に発表し議論を巻き起こした彼の有名な論文−患者との身体的接触の問題に関する考察−を、批判者の主張を踏まえてさらに考察を深めた論考である。この7章の記事について、少々考えてみたい。

(この項つづく)