歯垢怪人の恐怖

 今日はショッピングセンターで買い物。その中央広場で「デンタルフェアー」が開催されていて、虫歯チェックや歯磨き指導などが行われていた。その中に、拡大カメラでテレビ画面に口の中を歯を映しだすコーナーがあって、おじさんが自分の口の中をテレビで映して喜んでいた。しかし他人の歯って汚く見えるもんだな、と思いつつ通り過ぎる。
 真ん中のステージでは、「デンタルクイズ大会」。ショッピングにきていた親子づれを対象に、岡田奈々をふっくらさせたような司会のお姉さんと、着ぐるみのクマとのかけあいで歯に関するクイズ大会をやっていた。日曜の昼下がりとあって、会場はのんびりムード。
 そしてクイズ大会が滞りなく終了。すると司会のお姉さんは突然、「じゃあ最後に歯磨きの味方、デンタレンジャーを呼んでみましょう」と語り出し、「みんな一緒に、呼んでね。デンタ・・」といったところ、「おい、ちょっとまて」と声が響き、突如として『ゴジラ対ヘドラ』に出てきたへドラのような異形の怪物が登場。あまりに唐突。凍り付く会場の子供達。怪物は、「俺様は歯垢怪人ダークプラークだ。口の中をべとべとにしてやる」と叫ぶ。お姉さんは怯えて「助けて」というが、クマ君ではどうにもならない。そこでお姉さんは、「そうだデンタルレンジャーを呼びましょう」といって、「助けて、デンタ・・・」といったところで、歯垢怪人が攻撃。口を押さえて倒れ込むお姉さん。「どうしたの」とかけよるクマ君。緊張が走る。「はっはっはっ、歯垢で口の中をべとべとにしてやった。もう声は出せまい」と、いやらしく高笑いするダークプラーク。お姉さん、歯垢だらけで口が開けられず悶絶している。「く、くそー」とクマ君は立ち上がる。クマ君がんばれ! しかしダークプラークの攻撃に、クマ君も口をおさえて倒れ込む。あえなく秒殺。クマ君あまりに弱し。
 するとダークプラークは会場へ向き直り、「ちびっこたち、今度は君たちに攻撃してやる、これでもくらえ」と叫ぶと、「こわいよー」と泣き出す子も複数出現。こえー。
 と、そこへ「お前達何している」とデンタレンジャー登場。やった。華麗な動きで歯垢怪人を粉砕。いいぞいいぞ。そして最後は、みんなで歌「デンタルパワー」を踊りながら歌って大団円。おおー、すばらしい。
 興奮さめらやぬまま立ち上がると、口内カメラのコーナーでは、今度はおばさんが口の中をテレビ画面に映して感心していた。

 小此木啓吾著『家庭のない家族の時代』。1983年刊。家族を感情の容れ物(コンテイナー)として捉えるなど、精神分析の知識がさりげなく用いられ、一般の人々にわかりやすく伝える能力には嘆息の他なし。
 次に、『フロイト全集 9 1906-09年』から、『神経症者たちの家族ロマン』。いままで一般に「ファミリーロマンス」という言葉で流布していたが、今回は「家族ロマン」と訳語の変更あり。確かに、物語のことを指しているのだから「ロマン」が正しい。
 その後、小此木啓吾北山修編『阿闍世コンプレックス』。2001年。これはかなりの力作。時間がかかりそうなのでぼつぼつ読む。河合隼雄先生が、古澤−小此木の阿闍世譚の読みかえについてどこかで触れておられたはずだが、本日探しきれず。