香山リカ著『親子という病』、斎藤環著『母は娘の人生を支配する』などを読む

 「家族」をテーマにした一般向けの書籍にも目を通してみる。
 香山リカ著『親子という病』、2008年9月初版。この著者の本は初見。ところどころ才気を感じるが、全体としては厳しい出来栄えといわざるをえない。情報と思考の断片がパッチワークのように継ぎ合わされている感が強く、また親子をめぐる事件についてのマスコミで流れるきわめて断片的な情報から精神病理を再構成して、著者の主張の裏づけとしてしまう論理展開の強引さが目につき、読んでいてひやひやしてしまう。他の本もこんな出来栄えなのだろうか。
 沢山の本を出版されているのだから、きっと才能の豊かな方なのだと思うが、もし他の著作もこうした出来栄えであるとすれば、その才能が本当に豊かな仕事を生み出すことに用いられるのでなく、出版の自転車操業をまわすエネルギーとして放散されているのではないだろうか。もちろん、情報を着想で糊付けし一冊の本として構成して商品として流通させるという行為自体は、その情報を必要としている人がいて、その情報の受け手の中で何か変化が起こるのであれば無意味なことではない。多分香山氏はそうした役回りを自覚的に引き受けておられるのであろう。しかしそうして流通した主張の命は極めて短いものになりがちで、いわば「消費」の対象でしかなくなってしまう。それではあまりにもったいない。時間の熟成作用を受けた思索に基づいた、この著者の本を読んでみたい。
 次いで、斎藤環著『母は娘の人生を支配する』。2008年5月初版。これは結構面白く読む。この本で紹介されている、よしながふみ氏の本に関心を持った。注文しよう。斎藤氏の仕事については、またあらためて。
 最後に、落合恵美子著『21世紀家族へ―家族の戦後体制の見かた・超えかた』。1994年、初版。2004年第三版。まだ読みかけだが、これはとても良い本だ。明日以降、読み進めるのが楽しみ。