さようならとありがとう

 近しい親族に不幸があった。うすうす予想はしていた死であったとしても、不幸な知らせはいつも突然訪れる。その突然さが、どうしようもなく残酷でもある。

 亡くなった人のため、そして残された家族のために親族や知人が集まった。棺の前で手を合わせ、感謝し、遺体に花を手向けた。斎場で棺を見送り、そしてお骨を拾った。そうした儀式を通じて、大切な人を失った悲しみを皆で共有し、一人でないことを確認し、相互にきづかい、いたわりあい、なぐさめあった。そして皆が悲しみを共有する中で、誰もがいずれは死ぬのだということにもあらためて気づかされた。

 ずいぶんと遅くなった帰路、過去の記憶がとてもいとおしく思い出された。いつもは何の気なしにみあげる、冷え冷えとした冬の夜空でまたたくオリオンが、白い息の向こうで確かに見守ってくれているように感じて、おもわず、ありがとうとつぶやいた。オリオンの向こうに、その亡くなった人を見、そしてさらに遠くに永遠を見たのだと思う。もちろん、オリオンも何億年後かには消え去ってしまうことは分かってはいるのだけれど。