由布岳から阿蘇へ

 九州では、由布岳から阿蘇へと巡った。
 由布岳は、なかなかに面白い山容をしている。なだらかな緑の尾根が続いているかと思うと、やや突然に稜線がぐっと立ち上がる。しかしその線は険しいものではなく、やわらかな曲線である。だから全体としても、威厳があるけれども、けして人を峻拒する厳しさはそこにはない。下から見上げる人を見守ってくれる、ある種のやさしさを感じさせる山だ。昔の人々が、この山に「ゆふ」というやさしい響きの名前を選んだ理由が、なんとなく分かる気がした。
 いっぽう阿蘇は、また違った趣を持っている。広大なカルデラの中に立って阿蘇の山々を見上げると、実に視界の大半をおおうほどの雄大さをもって迫ってくる。稜線はうねることもなく折れることもない、まっすぐで伸びやかなものだ。そんなゆったりした曲線が左右から近づいて、頂上付近でおだやかに結ばれる。実に素直で大らかな姿の山がいくつも連なり、全体としては圧倒的な存在感をもって横たわっている。この山の姿が見る人にもたらす安定感というのは、比類ないものだと思う。
 そんなことを考えながら、もう少し九州を巡る。