片口安史著『新・心理診断法』

 「意味の生成」について考えるために、ロールシャッハテストを十分理解しておくことが重要ではないかと思って、片口安史『新・心理診断法』を再読。
 僕はロールシャッハを理解しようと、今から20年ほど前に「関西ロールシャッハ研究会」というところに通ったことがある。ところが参加者の中で精神科医は僕だけで、ほかはみんな心理の人だったので、なんとなく居づらくなって一年でやめてしまった。その1年は力をいれて勉強したけれど、その後まったくロールシャッハからは遠ざかってしまったので、ほとんどスコアリングのことなど忘れてしまった。いまでは心理の先生のレポート内容を理解できる程度の知識が残っているだけである。なさけないなあ。
 ただ今でも印象深く記憶に残っているのは、研究会の代表をつとめておられた辻悟先生のことだ。先生の頭脳の回転の速さと指摘の鋭さには、たびたび驚かされた記憶がある。今回読んだ片口先生のこの本の中にも、辻先生の主張が何度も紹介されていて、セミナーのことをいろいろと思い出した。とくに力動的理解にもとづいた内容分析に対する厳しい批判など、懐かしい思いで読んだ。しかしネットで調べてみると、もう84才になっておられるようだ。お元気であれば良いのだが。
 そして、ネット上で辻先生の診療についての面白いエピソードも発見。辻先生のシュライバーをなさっていた先生による紹介記事だ。
 予備校のもう一つの部屋「辻説法」
 これはすごい。「黙ったままでは分からん。私の治療を受けるのかそれともやめるのか?」と患者にせまる辻先生の迫力。いやあ、こんな診療、絶対できないな。

新・心理診断法―ロールシャッハ・テストの解説と研究
新・心理診断法―ロールシャッハ・テストの解説と研究片口 安史

金子書房 1987-06
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