フローベール『ボヴァリー夫人』

 年末を控えて、外来診療に追われる日々。ちょっと現実逃避したくて、小説に手を出した。
 『ボヴァリー夫人』。フローベール、35才(1856年)の作品。伊吹武彦訳の岩波文庫版で。
 自らの夢と愛欲に惑わされ、恋に生き、そして滅んでいく女性エンマの悲歌。愚かなエンマの人生を描く中で、フローベールは人間の醜さや弱さ、浅ましさを容赦なく描きだしていく。そしてそのような精密な心理描写を、彼一流の劇的構成力が力強く支えていく。
 すばらしい。フローベールの語りのうまさを堪能した。

ボヴァリー夫人 (上) (岩波文庫)
ボヴァリー夫人 (上) (岩波文庫)フローベール 伊吹 武彦

岩波書店 1960-06-25
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