ボウルビィによる、クライン派への批判

ジョン・ボウルビィは1957年、英国分析協会で、「The Nature of the Child's Tie to His Mother」を発表した。動物行動学的視点を導入して乳児の行動について検討した論文だったが、この論文は強烈な批判にさらされた。とくにクライニアンからの批判は、かなり過酷なものだったようだ。
 Phyllis Grosskurth著『Melanie Klein: Her World and Her Work (The Master Work Series)』に、このことを振り返ってボウルビィが語ったことが記されている。以下の彼の主張を簡単にまとめておく。

 クライン派が彼の論文に対して、強烈な反応を示した理由は次の二つだ。一つは、食事やfeedingの影響(つまり口愛性)を過小評価したこと。そして、彼が動物のデータをつかったこと。このような点に立腹して、彼らは論文を批判した。クライン派は、自分たちとは異なった考えに対しては、常に不寛容な人たちだった。
 他にも問題があった。クライン派は、患者の治療から得られたことだけをもとに、分析理論が構成されるべきだと考えている。私は、そのような考えに反対だ。データの源が多い方が、より良いthe more sources of data the betterと考えるからだ。(pp.403-405)。

 なお他書(John Bowlby and Attachment Theory (Makers of Modern Psychotherapy))に記されている、ボウルビィの分析トレーニングの概略をまとめておくと、次のようになる。
 彼はジョアン・リビエールの分析を受けた。→一人目のスーパーバイザーとは、波長があわなかった。→二人目のスーパーバイザーのエラ・シャープとは、うまくいった。→1937年に分析家となり、クラインのスーパービジョンのもとで児童分析のトレーニングを開始した。ただクラインが環境に関心をほとんど向けていなかったことで、衝突しがちだった。(pp.19-23)

Melanie Klein: Her World and Her Work (The Master Work Series)
Melanie Klein: Her World and Her Work (The Master Work Series)Phyllis Grosskurth

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