タビストックにおける、ボウルビィの仕事のはじまり

 Jeremy Holmesによるボウルビィの解説本『John Bowlby and Attachment Theory (Makers of Modern Psychotherapy)』に、彼がタビストックで仕事をはじめた当時のことが書いてある(pp.26-29)。以下に、短くまとめておく。

 第二次大戦後、Bowlbyはタビストック・クリニックでの仕事を開始した。そこで臨床サービス、患者の治療、スーパービジョン、ケースカンファレンスなどを行った。さらにエスタ−・ビックと児童心理療法のトレーニング部門を創設した。彼は後にクライン派とは袂を分かったが、それでもなおこの部門を支え続けた。
 さらに彼は、分離separationが子どもの発達に与える影響を調べる研究を開始した。このころに彼が雇用したのが、メアリー・エインズワースであり、そしてもうひとりがジェームス・ロバートソンであった。このロバートソンは第二次大戦では良心的兵役拒否をし、アンナ・フロイトのHamsted residential children's nurseryでボイラーマンとして勤務をしていた人だった。(なお、彼は後にソーシャルワーカー、そして分析家にもなる)。
 タビストックでロバートソンはボウルビィとともに記録映画「A Two-year old Goes to Hospital」を完成させる。当時、子どもが入院する場合であっても、親のつきそいは厳しく禁止されていた。そのためたとえ小手術を受ける場合でも、長期にわたって親から分離させられることになった。この映画は、ひとりの女の子の入院生活を追うことで、人為的に与えられたmaternal deprivationが、子どもにいかに激しい心理的苦痛を与えるかを、克明に映し出している。この映画は時の政策にも影響を与え、児童の入院の際にも親のつきそいが許容されるようになっていく、その転換点となったという意味で英国の医療史的にも意義深い作品である。
 で、この映画の一部がYou Tubeにあがっている。→ここ
 あと監督Robertson紹介のホームページもある。
 ところでこのJeremy Holmesの本の表紙には、ボウルビィのアップの写真が載せられている。この写真で印象的なのは、鼻の穴からものすごい量の鼻毛があふれかえっている点だ。なかなか、ここまでほったらかしにする人はいないだろう。これだけの量を恥じることなく生やし続けるところに、ボウルビィの飾らない人柄がしのばれる。

John Bowlby and Attachment Theory (Makers of Modern Psychotherapy)
John Bowlby and Attachment Theory (Makers of Modern Psychotherapy)Jeremy Holmes

Routledge 1993-09-16
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