組織論をまだ学ぶ

 組織論のインプットを引き続き。おもにタビストック関連の論文から。
 まずIsabel Menzies Lyth著『Containing Anxiety in Institutions』から歴史を画した論文、『The functioning of social systems as a defence against anxiety』を読む。総合病院の看護師の心理を主題にした論考。業務の中で否応なく湧き起こってくる強烈な感情に直面するなかで、看護師たちがそれを体験しないですむように防衛を駆使するありさまを、具体的に容赦なく描き出していく。この本には、当時の看護雑誌に投稿されたこの本に関する書評や投稿が付されているが、その文の行間から読み取れる看護師たちの動揺ぶりから、Lythの仕事がいかに当時の看護の現場に大きな衝撃を与えたかがよく見て取れる。
 このLythは日本では紹介がされておらず、『Melanie Klein Today』に収録された彼女の論文も、邦訳の際に割愛されてしまっている。ああ、よい仕事なのに、もったいないなあ。
 次に、Eric Miller著『From Dependency to Autonomy: Studies in Organization and Change』から、今度のレクチャーに関係しそうなところだけ二、三の論文をつまみぐい。概して明晰な文章で主張が理解しやすく、なかなかの好著。中でも『Geriatric Hospitals as Open Systems』を身につまされる思いで読んだ。そこでは、総合病院でよく見られる防衛として、conflict displacementとscapegoatingとが挙げられているのだが、その例として、看護師が患者の終末期ケアについての葛藤を解消できない場合に、医者にぶつぶつ批判をぶつける傾向があることなどがリアルに書いてあったりする。こういう記載を読むと、看護師さんとの関係で苦労した研修医の日々を思い出して、なんだかどんよりした思いが湧いてくる。ああ、しんどかったなあ、と。
 でもまあイギリスの研修医だって、僕らと同じように病棟のボスキャラ看護師に「まったくもう、今年の研修医はだめなんだから、ぷりぷり」なんて毎日文句をいわれて苦労してんだろうな、などと考えなおすと、少しは癒されるような気もする。でもまあ、低次元の「癒し」ですね、これでは。