ビオンが思い出すインドの風景

　1897年にインド北部の街Muttraで生まれたビオンは、８歳で故郷を離れて英国のboarding school - Bishop's Stortford Collegeに入学する。これはヴィクトリア朝で確立された教育習慣が反映した決断であり(The Work of W.R.Bion p2)、その背後には立派なGentlemanになってほしいと願う両親の強い思いがあったのだろう。
　大人になったビオンは、インドに対して常に愛着を向け続けていた。それは死ぬ際まで変わらなかったようで、1979年11月に急逝したビオンは、その二ヶ月後にムンバイに行く予定があったという。(The Long Weekend p6)またビオン54歳の時、フランチェスカへ送った手紙(1951年3月23日）には、次のような一文がある。

To me, rain was of course the great event, the monsoon, and I can even now, though I left India when I was eight, recapture the thrill of the smell of parched land rain-soaked.(The other side of Genius pp73-74)

　親元を離れて英国に一人旅だった８歳のビオンの胸に宿った寂しさは、彼の内的なインドの風景を美しいものに見せたであろうし、インドに対するある種の理想化が働いたであろう。

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