覚え書き(心理療法)

ダニエル・スターン死す

発達心理学者ダニエル・スターンが亡くなった。享年78才。The New York Times誌の死亡記事はこちら 僕は、彼の著作にはいつも関心を寄せてきた。それは彼の著作には常に、乳幼児のこころを理解する視点の確かさと、人間の発達や変化の本質をつかみ、自らの…

フロイトの生家をStreet Viewで確認する

フロイトの生地フライベルグについて調べるついでに、Google mapで生家の場所を確認してみた。すると、ここであることがわかった。Street Viewで正面に見える小さな黄色い家が、フロイトの生家である。 なおnocteさんが、この生家を2010年に訪問されている。…

ビオンが思い出すインドの風景

1897年にインド北部の街Muttraで生まれたビオンは、8歳で故郷を離れて英国のboarding school - Bishop's Stortford Collegeに入学する。これはヴィクトリア朝で確立された教育習慣が反映した決断であり(The Work of W.R.Bion p2)、その背後には立派なGentle…

メスメルの桶のカラー写真

有名なメスメルの桶(バケ−)のカラー写真を見つけた。現存する唯一の桶とのことである。せっかくなので、紹介しておく。 写真はこれです。 うわー、すごい迫力だ。 なお、引用元のサイトはこちら。 メスメルは、この桶を使ってどのように治療していたのだろ…

陸軍面接官に土居健郎先生が述べた危険な発言

昨日の日本経済新聞の夕刊に、土居健郎先生についての「追想録」が掲載されていた。日経の特別編集委員の方が執筆された、『「甘え」の構造』の紹介を軸にした記事である。 ここに先生の最後の日々の様子が紹介されている。 亡くなる半月前まで、東京・世田…

ザビーナ・シュピールラインの人生とユング(4)

ずいぶんほったらかしにしていたテーマだが、気分が向いてきたので、また続けます。 なおこの連載のリンクは、一回目、二回目、三回目。 前回はフロイトとユングが断絶するところまで、紹介した。今回はその後の顛末。 フロイトとユングが決裂した後も、シュ…

ザビーナ・シュピールラインの人生とユング(3)

前回のエントリーはこちら。 その後、アメリカ行きの船上で、フロイト、ユング、フェレンツィは互いに夢分析を行うが、そこでユングとフロイトの関係に軋みが生じ始めた。フロイトはユングの行う解釈に対して、「私自身を他人に分析させることはできない、私…

ザビーナ・シュピールラインの人生とユング(2)

さて、シュピールラインとユングの関係について。今回もカロテヌート著『秘密のシンメトリー―ユング・シュピールライン・フロイト』などを参照しつつまとめていく。(特に断りのない引用はこの本から) シュピールラインは1904年にユングの治療を受け始めてい…

ザビーナ・シュピールラインの人生とユング

この間、『精神分析療法の道』を素材にして禁欲原則について考えている。過去のエントリーはこちら。 フロイトS.Freud著『精神分析療法の道』を読む - Gabbardの演習林−心理療法・精神医療の雑記帳 フロイトS.Freud著『精神分析療法の道』を読む(2) - Gabbar…

クラインVS美輪明宏

今日は子どもたちを保育園へ送迎中、「どっちが強い」という話題になった。たとえば「ヒグマとホッキョクグマはどっちが強い」、「マリオとルイージはどっちが強い」といったテーマについておしゃべりに興じた。そんな中、「和式トイレと洋式トイレ、どっち…

『ニコマコス倫理学』を通じて心理療法を考える

アリストテレス著『ニコマコス倫理学』を読み終わった。この本に関するエントリーは、これが最後の予定。そこで今一度この本の中心の主張だけをまとめ、心理療法に照らして考えられることを書いておく。 この本の主張をまとめると、幸福(エウダイモニア)こ…

ベタなネタの治療的効用について

それはともかく、坂元薫先生のベタなギャグについての続き。坂元先生の講演の記録は以下のリンクを。 坂元薫先生の講演のベタさに感激 - Gabbardの演習林−心理療法・精神医療の雑記帳 今日は、治療者がベタなことをいうことは、治療的に有効だということにつ…

親鸞と罪悪感について

今日は法事。 我が家は浄土真宗で、僧侶に導かれるままに親族一同で正信念仏偈を誦経する。今までしっかり読んだことがなかったので、読経の合間にざっと内容に目を通したが、阿弥陀如来の位置づけや浄土の説明、中国浄土の高僧や、また源信や法然に関する説…