緩和ケア病棟の天井について

 本日の夜は、緩和ケアチームの定例カンファレンスがあった。
 ある患者さんが呟いた「病院で天井ばかり見て過ごすのがつらいから、家に帰りたい」という発言が報告されるのを聴いて、「そういや、天井のことってあまり考えてこなかったな」と気がついた。
 中井久夫先生のように設計まで手がけることは当然できないけれど、病棟の構造というのはとても重要な治療ツールなので、過去あたらしい病棟や診療室をつくるときには、僕なりにいろいろと考えて意見を述べてきた。でも天井については、ありきたりのことしか言ってこなかった気がする。たとえば「天井は高く」とか、「天窓をつけて」とか。
 でも終末期の患者さんは、どうしても天井を見て過ごす時間が多くなる。だから緩和ケア病棟とつくるときは、見える対象としての天井、という視点で考えないといけない。たとえば、古民家の古材をつかった梁をわたしたり、竹を敷き詰めたり。あるいは天窓でなくてよいので、壁の高い位置に窓を入れたり。仰臥位を取っていても、人間とのつながりや生命性を感じさせる物や風景が自然と視野に入ってくる、そんな造作にすることが重要ではないだろうか。
 でもそんな提案を本当にしたら、院長に「そんな予算がどこにある!」とどやされそうだけれど。