プラトン著『ティマイオス』

 ヨーロッパ思想の発展に決定的な影響力を与えた、プラトンの代表作の一つ『ティマイオス』を読んだ。プラトン全集12巻所収。訳者は種山恭子氏。岩波書店から1975年刊。 
 冒頭にソクラテスは出てくるが、すぐに引っ込んでしまい、その後ほぼ全編にわたってティマイオスが宇宙の創成について長広舌をふるう(p31からp178まで)。その内容が、今からみると荒唐無稽なものが多く「トンデモ本」と言ってよいが、そうした主張の内容はともかく歴史的に重要なのは次のような発想だ。

 構築者はすぐれた善きものでした。ところが、およそ善きものには、何事についても、どんな場合にも、物惜しみする嫉妬心は少しも起こらないものです。そこで・・・構築者は、すべてのものができるだけ、構築者自身によく似たものになることを望んだのでした。・・・神は、すべてが善きものであることを、そして、できるだけ、劣悪なものは一つもないことを望み、・・・その無秩序な状態から秩序へと導きました。それは、秩序のほうが無秩序よりも、あらゆる点でより善いと考えたからです。(p32)

 この箇所に典型的に表れている、目的論的な発想と、世界は秩序正しくつくられているという信念。ここに西洋思想の淵源の一つがあることが確認できた。
 しかしこんな重要著作が文庫化されていないとはどうなっているのか。岩波書店さん、がんばれ!

プラトン全集〈12〉ティマイオス・クリティアス
プラトン全集〈12〉ティマイオス・クリティアスプラトン 種山 恭子

岩波書店 1975-09
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