Therapeutic actionの要素について

 G.O.GabbardとD.Westenの共著論文『Rethinking therapeutic action』 Int. J. Psycho-Anal.,84:823-841.に目を通す。
 精神分析心理療法において、治療的効果をもたらす介入は何なのか。解釈なのか、治療関係なのか、あるいは他の要素なのか。この問題についての論点を整理した、ギャバードらの手になるレビュー。
 著者らによれば、精神分析におけるtherapuetic actionに関する見解は、近年において次のような変化の潮流が認められるという。1)「解釈か関係か」という二分法→therapeutic actionの多元性を認める流れ、2)患者の過去の再構成の重視→ヒア・アンド・ナウの交流を重視するようになった流れ、3)治療的雰囲気climateの調節negotiationが重視されるようになった流れ。
 このうち2)について。近年の精神分析においては、過去を掘り下げて再構成することよりも、現在の患者が抱いている葛藤や対象関係に対して、患者の過去がどのような影響を与えているのか、を見ることが重視されるようになった。
 近年はこれに加えて、エナクトメント、役割応答性role-responsiveness、あるいは投影同一化によって生じる現象も重視されるようになった。このような現象の中で、患者が繰り返している無意識的なパターンに患者自身が気づくようになると、次第に患者がそれを乗り越える感覚を抱くようになり、他の関係でも同じことが繰り返されていることを理解するようになっていく。
 このようなとりくみの中で、次のような患者の能力が高まっていく。まず、分析家のこころの中に存在している患者自身を発見していく能力。そして、患者とは異なる存在として、分析家の主体性が存在していることを感じる能力。つまりジェシカ・ベンジャミンが定義づける「間主観性」−対象objectが、最終的には、自分とは異なった内界をもった存在としてみなされるようなsubjectへとかわっていく発達的達成−が獲得されていくことになる。著者らは、そう整理している。
 しかしベンジャミンと言う名前にふれると、ベンジャミン伊東のイメージが侵入的に想起されてしまって、おちついて読めなくなる。困ったなあ。これは、私たちの世代が共通して抱えているこころの病なのだろうか。

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