Yへのメッセージ

 週末は保育園の卒園式であった。卒園文集に寄せたメッセージ、せっかくなので一部を変えて転載しておく。

Yへ−やがて20才になる6才の君に−

卒園おめでとう。
けんめいにお母さんのおっぱいを吸っていた君が
ここまで大きく育ってくれたことに感謝している。
卒園のお祝いに
やがて20才になる6才の君への
そして20才になった君の心の中にいるはずの6才の君への
メッセージを贈る。

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覚えておいてほしい。
これからも大きく、つよくのびていくだろう
君にとって大切なのは
鋼(はがね)のつよさではなく、
つる草のつよさをもつことだということを。
枠にはめられ固められることで
与えられるつよさを獲得するのでなく
じぶんの中からわきおこる力によって
しなやかなつよさを獲得することを。

覚えておいてほしい。
じぶんの弱さを知ることが
ほんとうのつよさであることを。
この6年間に、君はじぶんの弱さを知ったはずだ。
なきむしの君
おこりんぼの君
こわがりの君
よわむしの君
でも恥じることはない。
君の弱さは君にとっての宝物だ。
自分の中の弱さを大切にすることで
はじめて人にやさしくなれるだろう。
そしてはじめて人と深くつながることができるだろう。
君がその意味においてつよくなったとき
君はもう一人ではないのだということを。

覚えておいてほしい。
これからも育ちつづける君の中には
いつも6才の君がいるということを。
僕は思い出す。
むかし住んだ家のちかくの海岸で
夏の夕暮れに君とたたずんだこと。
保育園からの冬の帰り道
白い息の向こうに
またたくオリオンを君と見上げたこと。
そうした思い出は
君がこれから経験するだろう新しい記憶の中にうもれて
いずれはみえなくなっていくだろう。
でも君が皆と過ごした6年間の体験は
かならず君の心の中に
そして身体の中にいつまでもねむっている。
そしてそれこそが
これからの君の
大切な礎(いしずえ)なのだということを。