読書(心理療法)

フロイトS.Freud著『精神分析療法の道』を読む(2)

さらにフロイト『精神分析療法の道』を読んでいく。今日は、フェレンツィの能動(積極)技法についてフロイトが言及をはじめたところから。 フロイトは、彼が許容する「分析家の能動性」として次の二つをあげる。 抑圧されているものの意識化と抵抗の発見の…

フロイトS.Freud著『精神分析療法の道』を読む

すみません、フロイトの技法に関するマニアックな話題が続きます。ちょっと興がのってきたので、しばらく続ける予定。 さて『想起、反復、徹底操作』の次に重要な技法論文である、1919年の『精神分析療法の道』も見ていく。小此木啓吾訳、1983年刊の人文書院…

フロイトS. Freud著『想起・反復・徹底操作』を読む(3)

一昨日から、フロイトの『想起、反復、徹底操作』(人文書院『フロイト著作集 第6巻 自我論・不安本能論』所収)をとりあげている。1914年のこの論文でフロイトが考えていた治療図式は、患者が行動として反復している内的体験を、言語化して意識化すればその…

フロイトS. Freud著『想起・反復・徹底操作』を読む(2)

昨日要約した『想起・反復・徹底操作』(フロイト著作集 第6巻 自我論・不安本能論所収)について、気づいたことなど、断片的にだがまとめておく まず訳文に「操作」という言葉が多用されていることについて。この言葉からは、患者の主体性を尊重せず、治療者…

フロイトSigmund Freud著『想起・反復・徹底操作』を読む

自律autonomy、あるいは「患者の主体性」について考える中で、フロイトの考えを確認したくなり、『想起・反復・徹底操作』Erinnern,Wiederhoken undDurcharbeiten 1914を再読。今回は『フロイト著作集 第6巻 自我論・不安本能論 (6)』人文書院(1969年初版)…

鈴木大拙著『日本的霊性』を読む。

「ニコマコス倫理学」を終えて、鈴木大拙著『日本的霊性』へ。昭和19年12月、著者74才のときに出版された一冊だ。 まず、なぜ「日本的霊性」を選んだのか、書いておく。 全ての心理療法は、何らかの価値を志向した営為である。だから通常意識されることは…

ルノー著『緩和ケア』、ボウルビィ著『対象喪失』などを読む

この間、読んだ本を手短に。 ミッシェル・ルノー『緩和ケア ー精神分析になにができるかー』。ラカン派の分析家が緩和ケアについて講演した内容を採録した本。本文の記述から推測される聴衆は、一般の医師や緩和ケアに関わる医療職の人たちのようだ。個人的…

E.H.エリクソン著『ライフサイクル、その完結』を読む&さようなら、若井はやと

「老いと死」レクチャーの準備をさらに進める。 エリクソン著『ライフサイクル、その完結』。The Life Cycle Completed-A Review。1982年刊。村瀬孝雄、近藤邦夫の両氏による邦訳は1989年にみすず書房から刊行された。その後、妻ジョーンによって補われた3…

ユーゴーの絶倫ぶりに驚嘆−ボーヴォワール『老い』

というわけで、シモーヌ・ド・ボーヴォワール著『老い』を読んだ。原著は1970年刊。朝吹三吉による邦訳版は1972年刊。 数多くの文献を渉猟してまとめあげた力作ではあるが、あまりにも文献の引用が多すぎ。集めた資料を全部放り込んだかのような内容で、『老…

Rachael Davenhill編『Looking into Later Life』を読む

「老いと死」レクチャーの準備を始める。 まずはRachael Davenhill編『Looking into Later Life: A Psychoanalytic Approach to Depression and Dementia in Old Age』から。これはカルナックブックスが刊行しているタビストック・クリニックシリーズの老年…

藤山直樹編『ナルシシズムの精神分析』を読む

藤山直樹編『ナルシシズムの精神分析』を読んだ。2008年10月刊。 狩野力八郎先生の還暦を記念して刊行された論文集で、狩野先生に指導をお受けになった方々の筆になる論文が収められた一冊である。一つ一つの論文は、堅苦しくなく自由な体裁で書かれている。…

江藤淳『成熟と喪失』を読む

本日は、江藤淳著『成熟と喪失―“母”の崩壊』を読んだ。前読んだときには、江藤がエリクソンにこれほどまでに依拠して論じていたとは気づかなかった。エリクソンに依拠することでこの評論に強靱な理論的支柱が与えられたが、同時に当時の精神分析が有していた…

小此木啓吾、北山修編『阿闍世コンプレックス』を読む

今日も小此木啓吾、北山修編『阿闍世コンプレックス』を引き続き。この本はじっくり取り組んだ。充実した内容の一冊であったが、私にとってこの本の白眉は、第6章「阿闍世コンプレックスと古澤の人間的背景」にあった。古澤に師事した木田惠子氏の『問題は…

小此木啓吾編『青年の精神病理2』を読む

そろそろインプットをやめてレクチャーの中身を考えねばと思っているのだが、勢いでもう少し。 小此木啓吾編『青年の精神病理2』を読んだ。弘文堂刊『青年の精神病理』全三巻のうちの第2巻。1980年刊。1978年に行われたワークショップの内容をもとに構成さ…

マイクル・バリント『スリルと退行』を読む

本日も診療と書類記入の一日。しかし精神科は書類が多すぎるな。 その後、マイクル・バリント著、中井久夫・滝野功・森茂起訳『スリルと退行』。原題はThrills and Regressions。1959年刊。名高いThe Basic Fault(邦題『治療論からみた退行』)が1968年刊だ…

Stephen A. Mitchell and Margaret J. Black著『Freud and Beyond』

ミッチェルの『関係精神分析の視座』が存外に面白かったので、彼の次の著書も手に取ってみた。Freud and Beyond: A History of Modern Psychoanalytic ThoughtStephen A. MitchellBasic Books 1996-08-08売り上げランキング : 44353Amazonで詳しく見る by G-…

S.A.ミッチェル著『関係精神分析の視座-分析過程における希望と怖れ』

原書は1993年に米国で刊行されている。原題はHope and Dread in Psychoanalysis。ミッチェルの翻訳を過去2冊刊行している横井公一氏と、辻河真登氏の監訳によって、2008年5月に邦訳が刊行された一冊である。関係精神分析の視座―分析過程における希望と怖れS.…

S.A.ミッチェル著『精神分析と関係概念』

米国ウィリアム・アランソン・ホワイト研究所で活躍した精神分析家、ミッチェルによって書かれたこの本は、治療者と患者の関係性を軸にして、精神分析的な治療関係を広角的に捉えなおした、米国精神分析において重要な位置を占める一冊である。精神分析と関…

マートン・ギル著『転移分析』

マートン・ギルの主著『Analysis of Transference』の第一部の邦訳。彼の考える転移分析の姿とその理論的根拠を述べた一冊である。いずれ刊行される予定の第二部では臨床事例が集められており、理論と臨床との連結がなされる。 約200ページある一冊だが、…

W.N.Goldstein, S.T.Goldberg著『Using the Transference in Psychotherapy』

Using the Transference in PsychotherapyWilliam N., M.D. GoldsteinJason Aronson Inc 2006-11-30売り上げランキング : 503229Amazonで詳しく見る by G-Tools 「転移」という概念に関する理論史、とりわけ精神療法との関係に則して全体像を見渡した本であ…

S.L.Harris G.Platzner著『Classical Mythology -Images and Insights- 5th edition』

神話が無数の人間の精神活動の産物だとすれば、それを単に空想譚とみなして話の展開を受身的に楽しむだけではもったいない。そこに人間心理のあらゆる側面を観察し自分とのつながりを見出すといった積極的参与を試みることもまた神話の楽しみの一つだろう。 …

精神療法の実践的学習-下坂幸三のグループスーパービジョン

精神療法の実践的学習―下坂幸三のグループスーパービジョン広瀬 徹也 星和書店 2004-11売り上げランキング : 314360Amazonで詳しく見る by G-Tools この本は帝京大学精神科学教室において実施された、下坂幸三氏による精神療法のグループスーパービジョンの…

丸田俊彦、森さち子著『間主観性の軌跡』

間主観性の軌跡―治療プロセス理論と症例のアーティキュレーション丸田 俊彦岩崎学術出版社 2006-03売り上げランキング : 394725Amazonで詳しく見る by G-Tools これは一風かわった著作である。「著者まえがき」の言葉を用いれば、本書は間主観性理論の日本へ…

間主観的アプローチ臨床入門

先日、オレンジらによる「間主観的な治療の進め方」という本のレビューのようなものを書いた。間主観的な治療の進め方−サイコセラピーとコンテクスト理論 - Gabbardの演習林−心理療法・精神医療の雑記帳 その訳者の一人である丸田俊彦氏が監訳し、小此木研究…

ケースメント「Learning from our Mistakes」を読む

偶然ケースメントの新刊「Learning from Life」という本が出版されていることを知った。Learning from Life作者: Patrick Casement出版社/メーカー: Routledge発売日: 2006/10/05メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見る さっそく注文し…

間主観的な治療の進め方−サイコセラピーとコンテクスト理論

間主観的な治療の進め方―サイコセラピーとコンテクスト理論作者: ドナ・M.オレンジ,R.D.ストロロウ,G.E.アトウッド,Donna M. Orange,Robert D. Stolorow,George E. Atwood,丸田俊彦,丸田郁子出版社/メーカー: 岩崎学術出版社発売日: 1999/09メディア: 単行本…